火葬式

火葬式のメリット・デメリット

豪華に飾られた祭壇、広いホール、参列している大勢の人々……社会に広く浸透している葬儀のイメージとはこのようなものではないでしょうか。

しかしそんな中、この数年間で選択する方が急激に増えている葬儀形態の1つが「火葬式」です。

数ある葬儀の形式の中で最もシンプルなのがこの火葬式ですが、そのメリットとデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

火葬式についておさえておきたいポイント

  • 火葬式は、通夜や告別式といった儀式をせず、火葬のみを行う葬儀形式
  • 経済的理由から火葬式を選ぶ人が多い
  • メリットは費用が抑えられることのほか、時間の節約、そして遺族の心理的な負担を軽減できること
  • 周囲に理解されなかったり、お別れの時間が少なかったり、葬儀後に弔問客の対応に追われるなどのデメリットも
  • 火葬式にかかる費用の内訳を明確に提示してくれる、かつ対応の丁寧な葬儀社を選ぶのがポイント

火葬式とは

火葬場の外観

日本のお葬式の9割は仏教式。仏教式のお葬式では、お通夜告別式を経てから火葬を行い納骨するのが一般的です。しかし、火葬式では火葬だけを執り行います。故人とのお別れは、火葬炉の前で簡単に行われるのです。火葬式は、別名「直葬」とも呼ばれます。

(※日本の法律ではご臨終から24時間以内に火葬することができないため、1日安置場で故人と一緒に過ごすことはできます。)

僧侶が見える場合は、お別れのときと火葬炉に入れた後の数分間、ご供養されます。

参列者を招く手続きや、葬儀当日の対応に追われることなく、故人を惜しむことができるという点や費用を安く抑えられるという点から火葬式に注目が集まっているのです。

チェックポイント

火葬式では火葬のみを行う。個人とのお別れは火葬炉の前で行うのみ。煩雑な手続きや、当日の対応する必要がないほか、費用を大きく抑えられる。

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火葬式を希望する理由

葬儀の形式は遺族が決める方法と、故人の生前の遺志で選ぶ場合があります。近頃は、残された人生が短いことを理解して、ご遺族に迷惑をかけたくないという理由から終活を始める方が増えました。

そのような人の中には「自分が亡くなったときに、遺族に経済的負担をかけさせたくない」「少しでもお金を自分自身のために使って欲しい」という想いを込めて、火葬式を選ぶ人が増えているようです。

月間「仏事」の調査結果から、直葬や火葬式を望む理由は、経済的な理由が約6割を占めていることが分かりました。

【調査結果:火葬式を選ぶ理由】

  • 経済的理由:58%
  • 葬儀の意味を理解していない:14%
  • 宗教観の変化:9%
  • 参列者がいない:9%
  • その他:10%

チェックポイント

調査によると、火葬式を選ぶ理由で一番多いのが経済的なもの。「遺族に金銭的な負担をかけたくない」と思う人が終活をする人の中には多いようだ。

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火葬式のメリット

骨壷の写真

火葬式は、どのような魅力があるのかを確認していきましょう。

火葬式をすることのメリットは、具体的には以下の6点。主に費用面や煩雑な手続きによるストレスにかかわるものが多いです。

  • 費用を抑えられる
  • 葬儀の時間がかからない
  • 香典返しの準備の必要がない
  • 参列者の対応をしなくて済む
  • 儀式を行うための複雑な手続きがない
  • 宗教礼儀が不要

費用を抑えられる

通夜式・告別式を執り行わない火葬式の費用は安いです。通常かかる斎場の費用や接待費用分を抑えることができます。

実際に少額な生命保険にしか加入していなかったため、費用を安く抑えたいという方が火葬式を選んでいるようです

どれぐらいの費用を抑えることができるのかは、費用を比較したほうが分かりやすいと思うので、大手葬儀社の葬儀定額プランで比較してみることにします。

葬儀社 火葬式 一日葬 家族葬 一般葬
小さなお葬式 193,000円 343,000円 493,000円 643,000円
シンプルなお葬式 148,000円 278,000円 398,000円 498,000円
イオンのお葬式 198,000円 348,000円 498,000円 698,000円

上記の表から分かる通りで、火葬式の費用は非常に安いです。火葬式の場合は、お迎えから収骨まで必要最低限なもので済みます。

【火葬式にかかる費用の内訳】

  • 搬送料金(お迎え先からの安置場所、安置場所から火葬場までの搬送)
  • 安置室使用料(自宅安置ではない場合)
  • ドライアイス費(安置の日数により料金が異なります)
  • 役所、火葬場手続き代行
  • 棺用布団
  • お棺
  • お別れ花
  • 骨壷、骨覆い
  • 火葬料金
  • 人件費
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葬儀の時間がかからない

一般葬を選択した場合は、通夜式・告別式、初七日の順序で進めていくため、準備を含めて3日は必要です。

しかし、火葬式を選択すると、通夜式・告別式が不要です。

ご臨終から1日間はご遺体を安置しなければいけないと日本の法律で定められていますが、火葬場に到着して2時間程度、火葬と骨上げをすれば基本的に解散となります。そのため、早くて2時間ほどで火葬式は終わるでしょう。

香典返しの準備の必要がない

一般葬を選択すると、参列者の方が気を遣ってくれて香典を渡してくれます。

参列者のお気遣いのお礼のために、葬儀後に香典返しをしなければいけません。どのような品物を贈るのかなど決めるのも時間がかかってしまうものです。

しかし、火葬式を選択すると香典辞退の告知や香典返しは不要です。香典返しの手配などに追われることがなくなります。

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参列者の対応をしなくて済む

一般葬を選択したら、参列者を招待する通夜式と告別式を執り行います。実際に葬儀を執り行った経験がある方だと分かると思いますが、当日は参列者への対応に追われてしまい、故人との最期の時間をゆっくり過ごすことができません。

大切な家族を亡くしたときは、遺族は深い悲しみに暮れてしまいます。

そんな中での喪主としての務めは大きな負担になることは想像に難くありません。喪主を務めあげた後に参列者への対応や気配りも必要になってきます。とても圧迫されてしまうのです。

そのような負担を減らしたいという考えの方からも、火葬式は支持されるようになりました。

しかし、通常の葬儀にはある「故人が生前付き合っていた友人などと故人を偲ぶことによって、悲しみや寂しさが薄れる」という効果が火葬式にはありません。デメリットもあることを理解しておきましょう。

儀式を行うための複雑な手続きがない

一般葬を執り行う場合は、当時の段取りや手順など決めていかなければいけないことがあります。最愛の方が亡くなった場合は、精神的にも疲弊していることがほとんどでしょう。

そのような状況で、葬儀の段取りを決めていかなければいけないのです。このような手続きは大変で、心身共に負担になってしまいます。

しかし、火葬式は家族のみなど少人数で執り行われ、参列者の招待や通夜式、告別式などの準備が不要となるため、複雑な手続きに追われなくて済みます。

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宗教儀礼が不要

火葬式は火葬だけを行うので、僧侶の読経などの儀礼は行われません。そのため、僧侶の方に支払うお布施代も不要です。

チェックポイント

火葬式では、経済的な負担を軽減できるほか、葬儀前後の手続きや、当日の参列者の対応によるストレスをなくすことができるメリットがある。僧侶を呼ばない場合はお布施も必要ない。

火葬式のデメリット

火葬式にはデメリットもあります。

具体的には以下の6点。経済的ならびに心理的な負担を軽減できるかつ時間を節約できる火葬式ですが、その性格ゆえのデメリットがあります。

  • 周囲の反感を招く可能性がある
  • 故人との最期の時間が少ない
  • ご遺体の安置場所を確保する必要がある
  • 火葬式後に弔問者が訪問してくる場合もある
  • 菩提寺とのトラブルになる恐れがある
  • 悪質な葬儀社にあたる可能性がある

周囲の反感を招く可能性がある

経済的負担を少しでも減らしたいという考え方の人から注目を浴び始めている火葬式ですが、注目を浴びているのは、ここ数年前からの話です。そのため、まだ従来の葬儀の宗教や形式を重んじる方は多くいます。

一番最初に取り上げた葬儀の形態の調査結果からも分かるように、一般葬と家族葬だけで約8割にのぼります。

そのような考えを持つ家族や親族、周囲の方々から、火葬式で済ますことによって反感を買ってしまう恐れも少なくありません。事前相談をせずに火葬式で執り行うことを選ぶことによって、人間関係にヒビが入ってしまう恐れもあるのです。

このようなトラブルを防止する対処法として、身内だけで決めてしまうのではなくて、葬儀の形態は周囲に事前に伝えて、相談するようにしましょう。そのように対応することによって、起こりうるトラブルを事前に避けることができます。

故人との最期の時間が少ない

通常の葬儀は3日間ですが、火葬式は1日程度で終わります。なので火葬式を選び執り行う場合は、最後の別れの時間が短いことを認識して、安置時間から付き添えるように準備しておきましょう。

また、葬儀社によっては、安置しているご遺体に面会できない場合もあるので、葬儀社を選定する場合は注意が必要です。

ご遺体の安置場所を確保する必要がある

日本の法律では、ご臨終後24時間以内に火葬を行ってはいけないとされています。直葬(火葬式)とお聞きすると亡くなった後に、病院からすぐに火葬場に向かって火葬式が執り行われるイメージを持っている方もいると思いますが、それは間違いです。

一般的に葬儀社に依頼して「自宅安置」「預かり安置」「付添安置」から安置方法を選ぶことができます。安置に必要な寝台車や枕飾り、ドライアイスの準備なども葬儀社が行ってくれます。

火葬式後に弔問者が訪問してくる場合もある

火葬式は通夜式や告別式を行わずに、家族や親族のみで故人との最後を偲ぶ葬儀となります。そのため、故人が生前お世話になった友人や職場の人、ご近所の方は葬儀に参列しない場合が多いです。

しかし、直葬(火葬式)を行った後に「故人にご挨拶をさせてください」と弔問者が訪問してくる場合もあります。このような弔問者が訪問してきたら、故人のために訪問してくれたため、対応が必要です。

弔問者が来ることを想定してお茶の準備や御礼の粗品を下準備しておきましょう。

菩提寺とのトラブルになる恐れがある

火葬式では、僧侶を呼んでお経をあげてもらったり等の宗教的な行いを行わない場合が多いです。そのためお墓を管理している菩提寺は良い気がしません。

宗教的な行いをしない火葬式を選んだ場合は、遺骨をお墓に入れることを断ってくるお寺もあります。そのようなトラブルも発生する恐れがあるため、事前に納骨してもらえるのかを確認しておきましょう。

悪質な葬儀社にあたる可能性がある

直葬(火葬式)は安い費用で執り行えることが最大のメリットです。しかし反対に、葬儀社の利益が少なくなることになるのです。そのため、悪質な葬儀社の場合は、サービスの簡素化や追加料金を請求してくる葬儀社もあるようです。

たとえば、安置しているご遺体に会いたいと伝えると「面会するためのホールの利用費用が追加料金で発生します」などと言われて追加料金が請求されてしまうことも考えられます。

そのため、不安な場合は事前に葬儀社に質問してみて下さい。利益が出にくい家族葬だと態度が変わったり、強引に契約を迫ってきたりような葬儀社には注意しましょう。後悔しない火葬式を執り行うためには、信頼ができる葬儀社を選ぶようにしましょう。

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チェックポイント

近年増加しているとはいえまだ一般的な葬儀形式とは言えない火葬式。周囲の人々や菩提樹の理解が得づらかったり、火葬式の利益を生み出しづらい性格や法的な問題ゆえに予期せぬ負担が強いられるケースがある。

火葬式をあげる場合の葬儀社の選び方

火葬式を葬儀社に依頼する場合は、薄利であることから葬儀社の対応が雑になったり、不正請求がされてしまう恐れもあったりすることをお伝えしました。

このような葬儀社に当たらないためには、どのように葬儀社を選べばいいのでしょうか? ここでは、葬儀社の選び方について簡単に解説します。

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明確な葬儀費用を提示してくれる

葬儀を執り行う前に、明確な見積書を提示してくれる葬儀社は信頼できます。葬儀費用の内訳はとても細かいです。

葬儀社が激安プランで販売している基本プランは、実際に何が含まれているか分かりにくく、理想の葬儀を伝えると追加費用がかかってしまうことも少なくありません。

そのため、希望する火葬式を伝えて、最初から明確な費用を提示してくれる葬儀社を選ぶようにしましょう。

丁寧に対応してくれる

葬儀社の中には、低予算のお客様を粗末に扱う葬儀社もいます。低予算の葬儀を希望したいと伝えたところ、対応が冷たくなるような葬儀社も存在するのです。

特に火葬式の場合は、他の葬儀と比較して費用が安いです。どのような要望であっても態度を変えず、親切に対応してくれる葬儀社を選ぶようにしましょう。

チェックポイント

火葬式を行う際は、①明確に費用の内訳を提示してくれる、かつ②対応が丁寧な葬儀社を選ぶのが良い。

まとめ

近年、増加の一途をたどる火葬式。安くて心理的の負担を抑えられるというメリットがある一方、新しい葬儀形式であるがゆえに周囲の人や菩提寺の理解を得づらいなどのデメリットもあります。ご遺族の想定外の負担を避けるためにも、慎重に議論して決めましょう。

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最近では一日葬や直葬など、「できるだけ簡素に見送りたい」というご要望を特に多くいただきます。
しかし、「予算を抑えたい」「故人の遺志だから」という理由だけで深く考えずに決めてしまうと、思わぬトラブルが発生し、後悔や心労の残るお別れになりかねません。

葬儀の規模や内容の決定にあたっては、
故人様の遺志のみならず、ご親族の意向や、故人様の交友関係、菩提寺とのお付き合いなど、
様々な観点からじっくりと検討する必要があります。

私共「葬儀コンシェル」は、頂いたご質問・ご要望に的確にお答えするのはもちろんのこと、
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